Q 東京オリンピックに向けて公共の場や飲食店での禁煙化が進んでいます。私のアパートでも、今後は室内・敷地内での禁煙を条件に募集したいと思いますが、気をつけることはありますか?
A 室内・敷地の禁煙を条件にすることは可能ですが、違反した入居者を直ちに契約解除できるかは、建物を禁煙にする必要性・合理性によって変わります。また既存の入居者に対して新たに禁煙を強制すっることは難しいです。
室内で喫煙しただけでは直ちに契約解除にはなりにくいケースも
賃貸借契約において建物の利用に関する条件を付けることは、公序良俗に反したり、不当に賃借人の利益を害するものではない限り可能です。例えば、近隣への騒音被害防止のために夜間楽器演奏を禁止する特約を付けるのも広い意味ではその一環です。
健康増進法の改正が目指されるなか、受動喫煙対策のために、公共の場に限らず飲食店での全面禁煙の是非が取り沙汰されています。今ホテルでも全館禁煙であれば、住人の健康のためという目的に適います。
しかし、基本的に入居者のみが使用する居室内まで禁煙にすることは、住人の健康のためというより、オーナーの利益(室内の汚損の軽減)や価値観(嫌煙)を守るためという側面が強くなります。
したがって、そのルールが住人全員の健康のために重要だという合理的な理由(乳幼児のいる世帯が多い保育所併設型マンションである等)がないと、室内で喫煙しただけでは直ちに契約解除の理由にはなりにくいと言えます。違反の程度が甚だしいとか、何度も注意をしたのに改善が見込めないなどの事情が必要になってくるかもしれません。
途中から前面禁煙に切り替える場合、既存の賃借人への対応が難題
住人の健康維持という観点を「売り」にするのであれば、全室禁煙にしなければ意味がありません。一部貸室のみ禁煙では、「受動喫煙のないマンション!」などという広告も虚偽のものとなり、使用できません。
しかし、既存の賃借人に対して、後から室内禁煙の契約条件を課すには、その人達全員から、個別の同意を取り付けることが必用です。「室内喫煙が禁止されていないから入居した」という賃借人に対して、契約条件を不利益に変更することになるからです。途中から建物内禁煙を実行する場合、既存喫煙者への対応が一番の難題になってくるかもしれません。
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